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ビジネスホテルの思い出

 

一人で意味もなくビジネスホテルに泊まるのが好きだ - phaの日記

すげーわかる。関係ないけど、昔わけあって公にできない恋人と水戸のビジネスホテルに潜伏したことがあってその時の5日間くらいが俺の人生で最も堕落した5日間だったのを、ビジネスホテルに入るとたまに思い出す。

2015/01/20 11:23

 

id:KIKUKO 

たいした話ではないです。

快楽に溺れ、堕落し、続くはずのない恋の終わりから目をそらして、夢から覚めるのが怖くて怖くて、ただもうずっと身体を求め合っていた思い出があるというだけです。

 

せっかくなので少しだけ思い出話をします。

とてもプライベートな思い出ですから、退屈かもしれません。

 

一生忘れることのできないような恋をしていました。

4歳年上の彼女。先に申し上げたとおり人に言えない恋でした。

不倫、友人の恋人、上司と部下、先生と生徒、取引先、有名人、いろいろあると思いますが誰にも見られずに、ずっと一緒にいることができないような、そういう関係でしたので、東京を離れ、南は福岡から、神奈川、兵庫、京都、北は茨城と出かけては逢瀬を重ねていました。

 

水戸はその恋の中でも一番思い出のある土地です。

駅の裏側の古いビジネスホテル、平日の寂れた商店街、角のコンビニ、何度も通った昔からあるお好み焼き屋、ずっと肌を重ねていたあのタバコくさい部屋の隅々まで覚えています。

どのような恋愛にも、思い出の土地やかおり、色や音楽があるように、特別なものなど何もないあの街のあの景色やにおいが、僕と彼女の特別な思い出です。

 

ふたりはあっという間に堕落しました。

真夜中まで愛しあい、昼まで眠り、起きがけにまた彼女の肌の感触に溌剌とし、ベッドメイキングに鳴らされるチャイムを無視して喘ぎ、しびれを切らしたフロントから電話がかかってくるまで彼女の中に挿入していました。

二人で狭いバスルームに入って、体中にこびりついた汗と体液を流して乱雑な部屋をそのままに、追い立てられるように部屋を出て平日の閑散とした商店街を歩き、見つけたお好み焼き屋で彼女の大好きな焼きそばを食べる。

食後のアイスクリームを口に入れて破顔する彼女に、愛しさがこみ上げてくるとともに、自分の腕の中で悶える姿を思い出し、また彼女を抱きたくなり、壊したくなり、僕の心は骨の髄まで彼女のものだとひしひしと実感させられました。

コンビニで食料を買い込み、駆けこむように部屋に戻り、服を脱ぎ捨てて彼女の白くて柔らかな肌に滑り込み、唇を奪い、求め、果てて眠り、ベッドから出ないままくだらないTVを見ては感想を言い合って、彼女が持ち込んだノートパソコンでお気に入りのサイトを見せ合い、笑いあう合間に唇を重ね、見つめ合い、惚けたのです。

 

ある日彼女が、せっかく水戸にいるのだからあんこうを食べに行こうと言い出しました。

僕はあんこうという魚を食べたことがなく、それはいい案だと思いました。

少し雰囲気の良いお店を彼女がノートパソコンで調べて予約してくれました。

お腹いっぱい食べた頃、彼女は僕に感想を訪ねました。

僕はあのプルプルした食感があまり好きではないと思い、正直に彼女に告げると彼女は笑いながらそう言うと思ったと言いました。

彼女は僕の嘘を見破る特殊な能力をもっているのです。

「これであなたは一生あんこうを食べないでしょ?そしたら、あなたのあんこうの思い出は私だけのものだね」意地悪そうに、そしてとても満足そうに彼女は微笑みました。

それから帰り道、難しいあんこうの捌き方を教えてくれました。

こうやって吊るして、皮を剥ぐのよと、身振りで教えてくれる彼女の白い手が、暗闇でひらひらと動いてきれいだなぁと思いました。

彼女の思惑通り、僕のあんこうの思い出は今でも彼女のものです。

お金は彼女が払ってくれました。

 

別れ際になっても、まるで未来から逃げる恐怖心をぶつけるように愛しあいました。

30歳にも満たない若い二人が、どのようにして自分たちの心をそこへつなぎ止めておこうと考えたか、想像に難くないと思います。

 

ドス黒い塊の、本能と呼べるのかもわからないような欲望を、鈍った知性が薄い膜となって包んではいましたが、欲望が形を変えるままにぺたりと張り付いたその薄い膜も形を変えるようでした。

どちらのものともわからない体液のついた塊を彼女の口にねじこみその背徳的で甘い感触を存分に味わい、愉悦の声をあげては犯すように挿入し、強く抱きしめ、回らない頭でこのまま壊れてしまいたいと思ったものです。

 二人には、愛しあうことしかできることはなかったと、今でも思います。

 

水戸からの帰りのことはもうほとんど覚えていません。

嫌な思い出は消えてしまう都合の良い脳で良かったと思います。

ただ、彼女が最後にもう一度と、いつものお好み焼き屋に行こうとしましたが、あいにくの定休日で、ひどく残念そうな顔をしていたのをうっすらと覚えています。

人生なんて往々にしてそんなものですよね。

 

 おしまい。